日本子ども社会学会 地区(関東)研究交流会 報告
(掲載日:2014年03月17日)日 時:2014年3月15日(土) 13時30分~17時25分
場 所:明治学院大学 白金校舎(東京都港区)本館 1252番教室
参加者:23名(運営スタッフ含む)
総合のテ一マ『地域と学校が子どもを育てる―子どもが地域と学校で育つ―』
コーディネーター:望月重信氏(明治学院大学名誉教授)
開会に先立ち、本会の進行役を務める望月氏からの研究交流会の趣旨説明があった。次に、武内会長の挨拶のあと、以下の順3名の会員より報告がなされた。各報告後に簡単な質疑応答と、最後に総括討論として、3名の報告に対する質疑応答、意見交換がなされた。
報告①
牧野修也氏(神奈川大学非常勤講師)
「生活を記録する意味の再検討―郷土教育運動、生活記録運動を手がかりに―」
<要約>
地域を舞台にした生活記録とはどういうものか、日記や自治体史との違いを整理しつつ、表題にある2つの事例をもとに報告がなされた。1930年代と1950年代の生活記録を残すという実践から、指導者の問題設定、地域の風土(文化)によって、記録される内容が異なることを明らかにした。当時の人々にとって「郷土」とは何だったのかを考えさせる内容であった。
報告②
鈴木秀男氏(東京都江戸川区教育研究所非常勤研究員)
「学校・地域による教育のちがいと教材のデジタル化―学力、生徒指導、研修等に関する教師の“想い”を中心に―」
<要約>
テーマ設定の背景として、デジタル化の進展に伴う学校現場や地域社会の変化と対応がさまざまであること、とりわけ教材のデジタル化に対して、教師はどのような想いがあるのかを、『教師と児童・生徒のデジタル教科書に関する調査―小学校・中学校を対象に―』(公益財団法人中央教育研究所研究報告書No.79)の内容をもとに報告がなされた。全国を7つの地域ブロックに分けたデータ分析の結果から、それぞれの特徴が示された。さらに自由記述を管理職(校長)のみ取り出して、デジタル化による「研修形態の変化」「教材開発への期待」「実践を通して感じること」「自己改革」「経済力の差が学力の差」を感じていることが述べられた。
報告③
春日清孝氏(明治学院大学非常勤講師)
「子どもの育ちを支える環境とは―地域教育とコミュニティスク一ルの狭間で―」
<要約>
氏が長年フィールドとしている沖縄県読谷村での地域教育の実践状況の報告がなされた。「子どもの教育を通した地域づくりの可能性―地域コミュニティとコミュニティスクールとの関係を通して―」という課題(リサーチ・クエスチョン)に取り組んだ結果、①行政区(字)加入率低下に伴う、新しい地域参加システム構築の場としての学校の必要性、②学校は居場所と関係を用意できる、③地域が持つ文化、芸能の再生産がなされる、④子どもを媒介にした地域コミュニティネットワークの伸張、といった子どもの育ちを支える地域環境の可能性が提示された。
各報告に対し、参加者からの多くの質問、意見があった。
報告①の牧野氏へは、生活記録運動を指導した教師のライフヒストリーについて、生活記録には都合の悪いことを書かない(言いたくないことは言わない)当事者に対して、どのように解釈すべきか、等の質問があった。
報告②の鈴木氏へは、地域ブロックの特徴の背景、デジタル教科書導入に伴う教師の負担感の理由、ICTの促進は子どもの学習面、社会性育成にどれだけ役に立つのか、等の質問があった。
報告③の春日氏へは、読谷村という地域特性、字と村と自治会との違い、地域芸能がどのように変化したのか、コミュニティスクールが沖縄では2校と少ないのはなぜか、地域コミュニティ、ローカリティ、リージョンといった各概念の違いは何か、等の質問があった。
各質問に対し、報告者から丁寧な応答がなされた。
時間の関係もあり、3者の報告をまとめるということはできなかったが、総合テーマである『地域と学校が子どもを育てる―子どもが地域と学校で育つ―』に対して、参加者全体で、地域という場で子どもが育つ意味の重要性と多様な論点がある(その整理が継続して必要である)ことを確認し、共有する有意義な時間となった。
記録:浜島幸司(研究交流委員会委員、立教大学)2014年3月16日
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