会長就任のご挨拶
関西大学 多賀 太
この度、日本子ども社会学会の会長を拝命しました多賀太です。
本学会の名称にある「子ども社会学」には、「子どもの社会学」にとどまらない「子ども社会の学」という意味が込められています(英語名称はThe Japan Society for Child Study)。
学会名称に込められた思いを反映して、会員の専門分野は、社会学にとどまらず、教育学、福祉学、保育学、人類学、心理学、歴史学、文学、子ども文化など多方面に広がっています。また、研究者や大学院生だけでなく、教育や福祉に関わる実務家や実践家を含め、会員の立場も様々です。そうした多彩な「会員相互の研究交流及び協力を促進し、子ども社会の理論と実践に関する学際的、総合的研究の発展に資すること」(会則第2条)を目的とし、本学会は1994年の設立以来30年以上にわたって活発な活動を展開して参りました。
今日の日本においては、少子化と地方の人口減少、外国にルーツをもつ子どもの増加、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の爆発的な普及やAI(人工知能)の急速な発達など、子どもを取り巻く社会環境は目まぐるしく変化しています。また、人種や民族、ジェンダー、障害の種類や有無、生活地域や経済状況などに応じて、子ども自身のあり方や子どもが置かれる環境も多様で複雑化しています。
「子どもは社会の鏡」と言われます。変化し多様化する子どもと子どもをとりまく環境をより深く理解することは、子どもの健やかな成長の支援はもちろんのこと、大人が自らのあり方を問い直し、将来へ向けた社会のあり方を構想するうえでも不可欠です。そうしたなか、本学会の存在意義と果たすべき役割はさらに重要なものとなっていくでしょう。
今期理事会では、歴代会長が取り組んで来られた、異なる分野の研究者同士の交流、ならびに研究者と実務家・実践家の交流をさらに活性化させ、学際的な子ども研究の発展と政策や実践への寄与の両面から社会に貢献できるよう、引き続き取り組んで参ります。
運営面では、会員のみなさまに対して、本学会ならではの出会いや学びの機会と、チャンレジングな研究や実践を発表する機会を提供すべく研究大会や部会のあり方に工夫を凝らすとともに、学会業務や大会運営の効率化を図り、運営に携わる会員の負担軽減と、会員や大会参加者に対する利便性の向上を両立させたいと考えています。
本学会が、社会に対しても、会員のみなさまにとっても、かけがえのない組織であり続けるよう、微力ながら尽くして参りたいと存じます。今後とも本学会の活動と運営に対して、ご理解とご支援を賜りますよう、よろしくお願いいたします。
2025年6月